
土地を借りて家を建てている方(借地人)とその土地の所有者(地主)では、同じ出来事でも視点や利害が全く異なります。
借地の場合は、契約更新、借地権の譲渡承諾、建替え承諾、地代改定など、法律問題が発生するケースが多く、借地借家法の規定や実務での取り扱いを十分に理解する必要があります。
本ページでは、借地契約に関して、よく寄せられるご相談を素材に、双方の立場からの基本的な考え方と進め方、借地非訟を含む法的手続のポイントを整理します。
なお、適切な方針や手続は個別の案件によって異なってきますので、具体的な案件については弁護士にご相談ください。
まず押さえたい基礎知識(借地権とその制限)

借地権は「建物を所有する目的」で他人の土地を借りる権利です。借地に関して定められている法律は、現在は借地借家法ですが、借地借家法が施行された1992年(平成4年)8月1日より前に締結した借地契約については旧借地法が適用されます。
借地契約は、何十年も前に成立し、その後長期間にわたって継続していることが多いため、実務上は旧借地法が適用される場面が多いです。
ところで、借地については法律や契約上、利用や処分に制限がかかっています。たとえば、自分が所有している土地であれば、その土地を自由に売却し、あるいはその土地上に自由に建物を建てたりすることができます。
しかし、借地権の場合は、地主の承諾を得なければなりません。具体的には、借地権を第三者に譲渡したい場合には、法律上、地主に対して承諾料を支払って承諾してもらう必要があるとされています。
また、借地契約上、建物を建て替えたり、大修繕をしたりする場合には地主の承諾を要するとされているケースが多く、その場合にも地主に承諾料を支払って承諾を得る必要があります。
さらに、借地の契約期間が満了した場合には、契約の更新手続を行う必要があり、更新料の支払いを必要とする場合もあります。
逆に、地主の立場からすると、借地人が借地権を譲渡、建物の建て替えをしたり、契約が更新時期に来たときは、借地人と交渉して、承諾料を決めたり、更新料を決める必要があることになります。
【借地人様向け】よくあるトラブルと解決の視点
建替え・増改築の承諾が得られない
借地上の建物を建替え・増改築することについて、法律上の制限はありません。しかし、一般的な借地契約では、建て替え・増改築については地主の承諾が必要とされています。(契約内容によっては、大規模修繕についても地主の承諾が必要とされている例もあります。)
したがって、その場合、借地人は地主に対して、実施しようとしている工事の内容を事前に説明した上で、その承諾を得る必要があります。
そして、承諾を得る場合には一般的には承諾料を支払う必要があり、借地権価格の10%程度がその相場とされています。(工事の内容や契約内容などによって異なることがあります。)
もし、地主から建て替え・増改築の承諾が得られない場合には、裁判所に借地非訟の申し立て(具体的には「増改築許可」の申立て)をして、裁判所に代わりに承諾をしてもらうことになります。
裁判所は、契約内容、建物の状況、予定している工事の内容や工事代金額などを総合的に考慮して、増改築を許可するか、また許可する場合の承諾料の金額を定めます。
借地権の売却をしたいが地主の承諾が得られない
借地権の譲渡については、法律上地主の承諾が必要です。また、一般的には承諾に対する対価としての承諾料(一般的には借地権価格の10%程度)を支払う必要があります。
地主が承諾をしてくれない場合や、承諾料の合意ができない場合には、借地人は裁判所に対して、借地非訟(具体的には「譲渡許可」の申立て)を行うことになります。
裁判所は、申立てが認められる場合には、裁判所が決める承諾料の支払いを条件として、地主に代わり譲渡を承諾してくれます。
なお、地主が借地権を買い取りたいと主張した場合には、裁判所が決定する金額で、地主が優先的に借地権を買い取ることができる権利があります(介入権)。
更新料を支払うべきかわからない
更新料については、契約に支払の定めがあったり、これまで更新時に更新料を支払ってきた実績があったりする場合には、その支払い義務があるとされています。
逆に、契約の定めがなかったり、これまで更新料を支払ったことがない場合には、支払い義務は否定されます。更新料の金額については、契約書に記載があればそれに従いますが、記載がない場合には、借地権価格の5%程度が相場とされています。(あくまでも目安であり、具体的な事情により異なります。)
【地主様向け】よくあるトラブルと対応方針
地代が安すぎると感じる(地代改定)
地代は、地価の高騰、租税公課の増加、周辺相場の変動、土地の利用状況の変化など「事情の変更」があれば、旧借地法や借地借家法の規定により増額請求できるとされています。
借地人との合意での改定が第一ですが、これが整わない場合は、裁判所の調停や訴訟によって相当額の決定を求める手続が用意されています。
改定の根拠として、固定資産税課税標準、路線価、鑑定評価、同種近傍の取引・賃料事例、土地の個別事情(間口・奥行・形状・接道)などを利用することになります。また、不動産鑑定士の意見書や鑑定評価書を利用することもあります。
譲渡承諾依頼への対応
承諾可否の判断は、主として、譲受人の資力(地代を支払うだけの収入や資産があるか)や反社会的勢力に該当しないかといった点を審査することになります。
正当な理由がなくこれを拒絶すると、借地非訟手続に移行する可能性が高いため、譲受人の資力や素性等に問題がない場合には、適正な承諾料を定めることに注力します。また、地代が相場と比べて安すぎる場合には、地代の増額を条件とすることも検討することになります。
建て替え承諾への対応
借地人から建て替え承諾の申し入れがあった場合には、まず建築計画の内容を具体的な資料をもって説明してもらいます。その際に、詳細な建築図面とともに工事の見積書を提示してもらい、工事内容を具体的に検討します。
もし、非堅固建物(木造住宅など)から堅固建物(鉄筋コンクリート造りなど)に建て替える場合には、借地の条件変更にも該当しますので、建て替えの承諾とともに、条件変更の承諾についても検討することになります。
建て替えの承諾料については、借地権価格や工事見積金額を参考に決定します。条件変更の承諾料については、更地価格の10%程度が相場とされています。
Q&A(よくある質問)
まず、契約書の条項を確認する必要があります。契約書に建て替えには承諾が必要との記載があれば、地主から承諾を得る必要があります(もしその記載がなかったとしても、地主に無断で建て替えるとトラブルになりやすいので、一報は入れた方がよいです)。
地主には、設計図面や工程表、工事の見積書を提出して工事の内容を説明します。その際、建て替えの承諾料について協議することになりますが、木造などの非堅固建物から鉄筋コンクリートや鉄骨造りの堅固建物に建て替える場合には、借地契約の条件変更についての承諾(及び承諾料の支払い)が必要になりますので、注意が必要です。
十分な説明をしても、地主の承諾が得られない場合には、裁判所に増改築許可の申立て(借地非訟)を申立することになります。
借地契約書に更新料支払いについての規定があったり、あるいはそれがない場合でもし過去の更新時に支払い実績がある場合には更新料の請求が認められる場合があります。
交渉が整わない場合には、更新料の支払いを求める訴訟を提起することになります。
借地人への売却、借地人と協力しての借地権との同時売却、持分交換など複数の選択肢があります。各手法の長短と税務・費用・期間を比較し、事前に条件を整えることで選択肢が広がります。
ご相談時にご用意いただきたい資料
- 契約書・更新覚書・覚書(条項:期間、更新料、承諾条項、禁止事項)
- 地代の支払履歴(通帳、領収書)、過去の改定経緯
- 固定資産税課税明細・評価証明、路線価図、近隣の賃料・地価事例
- 建替え・増改築の場合の計画資料(設計図、工事見積書、工程表)
- これまでのやり取り(手紙・メール・メモ)と時系列整理
資料が揃っていなくても対応は可能ですが、これらの資料を整えていただくとスムーズに方針決定ができることになります。
まとめ|実務や裁判例の傾向を理解し、合理的に解決する
借地の問題は、地主と借地人間の感情的な対立になりやすく、長期化する傾向があります。一方、建て替えや借地権譲渡の承諾が得られる要件や承諾料の金額(相場)は、実務や裁判例によってある程度定まっており、見通しが付きやすい分野でもあります。
実務や裁判例の傾向を分析して、交渉や借地非訟に臨むことによって、早期に合理的な解決につながりますので、具体的な案件については、実務や裁判例の傾向に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
借地権・底地の整理や解消でお困りの方へ。
専門弁護士が交渉を代行し、建替え承諾から底地の買い取り・売却まで、トラブルのない解決をトータルサポートします。

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