
共有不動産とは、一つの不動産を複数の人が共同で所有している状態をいいます。相続によって複数の相続人が不動産を取得した場合や、共同で不動産を購入した場合などに発生します。
共有状態では、各共有者は持分割合に応じた権利を有しますが、不動産全体の利用や処分には制約が伴うため、トラブルの原因となることも少なくありません。
共有のまま放置すると、売却・建替え・賃貸・担保設定などの重要判断で全員の同意が必要になることがあり、時間とコストが積み重なりがちです。
本ページでは、共有状態を解消する3つの基本手法(現物分割・代償分割・換価分割)の特徴と選び方を説明します。また、遺産三分割の場合の分割方法についても説明いたします。
共有物の分割請求権
民法第256条第1項は「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる」と定めています。
これを共有物分割請求権といい、共有者は原則としていつでもこの権利を行使できます。共有物分割は、まず共有者間での協議によって行われますが、協議が調わない場合や協議ができない場合には、裁判所に共有物分割請求訴訟を提起することができます(民法第258条)。
なお、共有者全員の合意によって、一定期間、共有物の分割請求をしない旨を約束する契約が可能です。不分割特約と呼びますが、不分割特約を締結することで、この分割請求権の行使を一定期間制限することができます。
ただし、その特約は最長5年しかできません(共有者全員の合意により更新は可)。
共有物分割の3つの方法(現物・代償・換価)の比較
| 方法 | 概要 | 向く場面 |
| 現物分割 | 不動産を物理的に分けて各自が単独所有する | 敷地に余裕があるなど分筆の余地がある場合、建物を区分しても機能が保てる場合 |
| 代償分割 | 誰かが不動産を取得し、他の相続人へ代償金を支払う | 現物分割ができない場合や現物分割をすると共有物の価値が著しく低下するような場合で、共有者の一部の者が他の共有者の持分を取得できるだけの資金的な裏付けがある場合 |
| 換価分割 | 不動産を売却し、持分割合に応じて売却代金を分ける | 現物分割や代償分割について協議が整わない場合や代償分割に必要な資金的な裏付けがない場合 |
現物分割:分けて持つメリットと注意点
測量で境界・面積を確定し、法的に分けられる形(分筆や区分登記)を検討します。接道要件、敷地形状、上下水・電気などの引込やり直しの必要性も確認します。
- 長所:各自が不動産を取得でき、独立に利用・処分が可能となる。金銭の授受が不要となるケースが多い。
- 短所:分筆や造成・インフラ工事のコストがかかる場合がある。細分化により資産価値が下がる可能性がある。不公平が生じる場合の金銭清算について紛争になる可能性がある。
代償分割:共有者の一人が取得し他へ金銭で調整
不動産の評価(複数の資料で裏づけ)、代償金の額・支払時期・支払方法を協議し、代償金の担保や遅延時の扱いも定めます。
- 長所:不動産を物理的に分割しないので、居住・事業の継続性を保ちやすく、物件の価値毀損を避けられる可能性が高い。
- 短所:持分を取得する共有者に資金調達の負担が生じる。評価額について争いが生じ、分割が先延ばしになる可能性がある。過大・過小な代償金は税務上の問題が生じうる。
換価分割:売却して現金で公平に分ける
共有者全員の同意があれば任意売却で市場価格の実現を目指します。合意が難しい場合は、共有物分割の調停・訴訟を経て競売となる可能性があります。
- 長所:分配が明確で公平感を得やすい方法であり、共有者間の利害を整理しやすい。
- 短所:相場や市場環境に左右される。競売は価格が伸びにくい傾向があり、手取りが減ることがある。
共有物分割請求の流れ|解決までの道筋
まずは共有者間で分割方法について話し合いを行います。全員が合意すれば、協議に基づいて分割を実行できます。
協議が調わない場合、裁判所に共有物分割調停を申し立てることができます。調停委員が間に入り、話し合いによる解決を図ります。調停を経ないで、訴訟を申し立てることもできます。
協議や 調停で解決しない場合、共有物分割請求訴訟を提起します。裁判所は、現物分割、代償分割、換価分割のいずれかの方法を判断して判決を下します。
裁判所は、原則として現物分割を優先し、それが困難な場合に代償分割や換価分割を命じることになります。換価分割の判決が出た場合は、競売にかけて共有物を売却し、共有者は売却金を持ち分に応じて取得することができます。
弁護士に依頼するメリット
共有不動産の分割は、法律的な知識だけでなく、不動産評価や税務面での専門知識も必要となる複雑な問題です。弁護士に依頼することで、以下のメリットがあります。
- 適切な分割方法のアドバイス
- 共有者間の交渉や利害調整の代理
- 不動産鑑定士・土地家屋調査士・司法書士など専門家との連携
- 調停や訴訟手続きの代理
- 親族間の感情的な対立の緩和
- 税務面も含めたトータルサポート
- 不動産業者の紹介
よくある質問(Q&A)
任意売却は原則全員の同意が必要です。合意が難しい場合、共有物分割の調停・訴訟を検討します。裁判所は現物分割が困難なとき、代償分割を選択するケースが多いです。
反対している共有者の持分を代償分割で取得することを検討することになります。
当事者の合意で代償分割をする場合には、分割払いは可能です。利息、遅延時の対応、担保(抵当権・仮登記など)を条項に明記すると実行性が高まります。一方、裁判所の判決で代償分割となるためには、取得する共有者の「資力証明」が要求されます。
つまり、取得する共有者に代償金を支払うだけの預金などがあるかの証明をする必要があり、それができない場合には代償分割の判決が出ません。
そのため、必然的に代償金の分割払いはできないことになります。
遺産分割協議が未了の場合は、遺産分割協議によって分割をする必要があり、共有物分割請求の手続は利用できないのが原則です(民法258条の2第1項)。
ただし、相続開始後から10年が経過した場合には、共有物分割請求の手続も可能となります。(相続開始から10年が経過する前に、遺産分割の調停や審判の申し立てがされている場合は除きます。)
まとめ|分割手続の選択には慎重な判断を
共有不動産の分割は、それぞれの事情や不動産の状況によって最適な方法が異なります。
また、親族間で共有しているケースでは、感情的な対立が生じやすく、進め方を間違えると解決までにかなりの時間がかかることになります。
加えて、分割を適切に行うためには、不動産鑑定士・税理士・土地家屋調査士・司法書士などの専門家との提携が必要になり、任意売却の場合には 不動産業者との提携も必要になることがあります。
事案に応じた適切な対応は個別の事情によって異なりますので、具体的な案件については弁護士に相談することをお勧めします。
共有不動産トラブルの解消、当事務所にお任せください。
複雑な交渉や権利関係を法的に整理し、円満な解決をサポートします。 親族間で対立が深まる前に、まずは一度ご相談ください。

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