不動産売買契約のトラブル相談|契約不適合責任・手付金の問題

不動産の売買契約は金額も影響も大きく、ちょっとした行き違いや勘違いで大きな損害を被ることがあります。

また、契約書の条項が多岐にわたり、不動産取引に慣れていない方には、「不利な条件になっていないか」「引渡し後に欠陥が見つかったらどうなるのか」といった不安がつきまといます。

本ページでは、不動産売買契約でしばしば問題になる、契約不適合責任の基礎、手付解除・違約金、ローン特約、リースバックの注意点などをわかりやすく解説します。

契約不適合責任の基本

契約不適合責任は、「引渡された目的物が契約で合意した内容に適合していない」場合に、買主が売主に対して主張できる権利を定めるものです。

目的物の単なる欠陥の有無だけでなく、契約の内容(物件の用途、物件の状況や設備に関する事前の説明内容など)に照らして判断されます。民法の改正により、買主が選択できる手段が明確になりました。

買主が取り得る主な手段 概要 ポイント
追完請求 修補・代替物の引渡し等を求める 不動産は修補が中心。費用負担や方法を契約で具体化すると紛争予防に有効
代金減額請求 不適合分相当の減額を求める 減額を求める金額についての評価方法(査定・工事見積等)の根拠付けが重要
契約解除 目的達成が困難な場合に解除 不適合の程度が契約内容や取引上の社会通念に照らして軽微である場合には、解除が制限される。
損害賠償 追完不能・不履行による損害の賠償 他の手段と併存可能。特約による制限は一定の範囲で有効

通知期間にも注意が必要です。

民法の規定(566条)では、買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しないと権利を行使できないのが原則とされます(ただし、売主が不適合を知りながら告げなかった場合などは別扱いとなります)。

この期間については、契約書の条項で短くしたり、長くしたりすることも可能です。したがって、売主の立場では、期間を短くすることによって責任期間を短くすることができます。

また、買主の立場では、この期間を長くすることによって責任期間を長くすることもできます。

ただし、消費者契約(売主が事業者、買主が個人)の場合において、責任期間をあまりに短く規定すると(たとえば、引き渡し日から1か月など)、消費者契約法によってこの規定が無効となるリスクがあります。

また、売主が宅建業者、買主が非宅建業者の場合には、宅建業法40条の規定により、「引渡しの日から2年以上」となる特約を除き、民法の原則よりも買主に不利な特約を定めても無効となります。

契約不適合責任の免責

契約不適合責任の免責とは、売買契約の際に、契約不適合責任を免除する特約を付けることを言います。民法で定められている契約不適合責任は、当事者が契約書において免責の特約を設けることで、売主は責任を免れることができます。

中古物件や不動産業者同士の取引の場合には、この免責特約が設けられることが多いです。

また、契約不適合責任を全面的に免責することも可能ですが、たとえば設備に関する契約不適合だけを免責にしたり、地中埋設物については免責の対象外にしたりするなど、自由に設定できるのが原則です。

しかし、以下の場合には、免責の特約が無効になる可能性がありますので、注意が必要です。

契約不適合の免責特約については、無効にならないように慎重に設定する必要がありますので、具体的な案件については弁護士に相談することをお勧めします。

  • 売主が宅建業者、買主が非宅建業者の場合
  • 売主が事業者、買主が個人である場合
  • 売主が契約不適合の存在について知っていて隠していた場合
  • 買主から目的物の状況について事前に質問があったのに敢えて回答しなかった場合

手付金・手付解除・違約金の基礎知識

売買契約で交付される「手付」には主に三つの機能があります。契約条項でどの手付かを明示し、金額や解除の期限・方法を具体的に書くことが重要です。

手付の種類 意味 実務上の留意点
証約手付 契約成立の証拠 性質を明確にしないと解約手付と解される可能性がある
解約手付 履行に着手するまでは、買主は手付放棄、売主は倍返しで解除可 「履行に着手」の解釈が争点になりやすい。具体例や期限を条項化すると安全
違約手付 違約時の損害賠償予定・違約金としての機能 他の違約金条項との整合、過大額は消費者契約法上の無効リスク

不動産の売買契約において手付金が交付される場合には、ほとんどの場合が「解約手付」です。

手付金の性質について当事者間に特別な取り決めがない場合には、「解約手付」であると推定されますので(民法557条1項)、解約手付ではないとする場合には契約書などに明確にその旨を記載する必要があります。

「解約手付」の場合、特に問題になるのが「履行に着手」したかどうかです。解約手付を放棄することによって買主は売買契約を解約できますが、「履行に着手」した後は解約ができないとされています。

判例では、「履行の着手」とは「債務の内容たる給付の実行に着手すること、すなわち、客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした」こととされています。

抽象的な表現であり難しい判断基準ですが、単なる準備を超えた実質的な履行行為を指すと解されており、例えば売主側で引渡し準備が相当程度進行した、買主側で代金支払手続が現実化した等の場合がこれに当たります。

実務的には、手付解除に関する紛争を避けるため、具体的にどのような行為をしたら「履行に着手」したとするのか、あるいは手付解除が可能な具体的な期限を契約書に明記するとよいでしょう。

ただし、具体的な認定は困難を伴いますので、手付解約に関する紛争は弁護士に相談することをお勧めします。

ローン特約の落とし穴

ローン特約とは、買主においてローンを借りられなかった場合に、違約金なく、また手付金が返還されるなど、無条件で売買契約を解除することができるという特約です。

個人が住宅を購入する場合の住宅ローン特約が一般的ですが、事業者間においてもローン特約が設定されることもあります。

たとえば、買主が誠実にローンの申込みを行ったにもかかわらず、指定期日までに融資承認が得られないときは、ローン特約によって売買契約を解除できる典型です。

ローン特約は、買主保護に資する一方、売買契約解約のための便法として用いられることがあるため、濫用防止の観点から、次の点を明確にしておくことが望ましいです。

  • ローン申込み義務の内容:申込先金融機関、必要書類、期限、再申請の要否。
  • 解除の要件:否決事由の証明の要否(金融機関の通知書等)、解除通知の期限と方法(書面・メール)。
  • 代替融資の取扱い:指定外金融機関での承認があれば特約失効とするかの明示。
  • 手付金・実費の精算:手付金・実費の精算時期や方法、仲介手数料の扱い。

売主の立場では、長期の「拘束リスク」を避けるため、承認期限の設定をしっかりと行うとともに、買主が真摯に融資申請をしているかどうかを常に確認するのが実務上必要になります。

また、買主の立場では、融資が得られなかった場合にローン特約を確実に適用することができるようにするため、真摯に融資申請をしたことについて証拠化しておくことが肝要です。

リースバック契約の注意点(売却後に賃貸して住み続ける)

リースバックは、物件を売却して資金を確保しつつ、そのまま賃借人として居住・使用するスキームです。資金繰りに柔軟性を与える一方で、売買と賃貸が複合するため、条項設計に抜けがあるとトラブルになりやすいです。

以下、リースバック契約時に特に注意すべき事項についてまとめます。リースバック契約の内容は複雑になりやすいので、契約を締結する場合は、弁護士にアドバイスを求めることをお勧めします。

  • 賃貸条件:賃料水準、敷金・礼金、契約期間、更新・中途解約、原状回復の範囲。

  • 滞納・明渡し:滞納時の催告・解除要件、立退きスケジュール。生活拠点の場合は慎重な設計が必要。

  • 再取得(オプション):再購入の可否、価格の算定式、期限、違約時の取扱い。買戻し特約と同視しない設計に留意。

  • 登記・引渡し:所有権移転と賃貸開始のタイミング、物件管理の役割分担。

  • 税務・会計・資金調達:税負担や評価の影響が大きいため、事前に関係専門家と連携して検討するのが安全。

リースバックは利便性が高い一方、賃料や再取得条件の設定次第で経済合理性が大きく変わります。見積もり・査定・将来の出口(再取得 or 住み替え)を複数案で比較検討してください。

売主のための契約書チェックリスト(ひな形の落とし穴)

不動産の売買契約を締結する際に、ひな形を利用することが多いと思います。特に仲介会社が入っている場合には、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会のひな形が利用されることがあります。

ひな形の利用は便利であり、時間の節約にもなりますが、個別事情に配慮して適切に追加・修正したり、特約を設定したりする必要があります。以下、売主側の立場からチェックすべき事項を整理します。

  • 物件の現況と合意内容の整合性
    物件の表示の正確性、物件や付帯設備の状況が契約条項や物件状況報告書と矛盾していないか。

  • 約不適合の範囲・期間
    責任範囲(追完請求に限定するか)、通知期間の設定、免責条項の例外(売主が知っていた事項など)、消費者契約法や宅建業法の規制に反しないか。

  • 越境・境界・面積
    測量義務の有無、地積相違の場合の精算、越境物・被越境物の有無とそれに関する合意の有無。

  • 公法規制・用途制限
    用途地域、建ぺい・容積率、再建築可否、私道の通行権の内容、既存不適格の扱い。

  • 引渡し条件
    残置物、建物内の動産、鍵・付属書類の引渡し、引渡し後の連絡窓口。

  • 手付金
    手付金の性質、解除の期限と方法、「履行の着手」の定義。

  • ローン特約
    承認期限、否決証明の方法、代替融資の取扱い。

契約書の雛形は汎用性が高い反面、個別の事情に合っていないことがあります。取引の際には弁護士に相談をすることをお勧めします。

よくある質問(Q&A)

Q
「現況有姿」の条件で売れば、売主は契約不適合責任は免れるのですか?
A

「現状有姿」との約定がある場合、契約不適合責任を免責する特約が存在すると解釈することができますが、免責の内容や範囲に争いが生じる可能性があります。免責の範囲や例外を具体化し、告知事項の整理を徹底することが重要です。

Q
契約不適合を発見したら、まず何をすべきですか?
A

写真・動画で状態を記録し、原因の拡大を防止したうえで、売主へ速やかに通知します。通知は内容証明等の記録が残る方法が望ましく、不適合状況やその原因に関する専門家の意見書を準備すると交渉が進みやすくなります。

Q
手付解除はいつまで可能ですか?
A

一般に相手方が履行に着手するまでとされますが、どこからが「着手」かは契約や状況で争いになり得ます。安全のため、解除期限や「着手」の具体例を契約に明記しておくとよいでしょう。

Q
買主にローン特約を悪用されたと感じる場合、どうすべきですか?
A

申込み義務違反や解除通知の遅延等があれば、特約の適用を否定できる余地があります。申込みの実態や金融機関の対応記録を精査して交渉する必要があります。

Q
リースバックの賃料が相場より高い気がします。交渉できますか?
A

賃料は合意事項ですが、周辺相場、資産評価、再取得オプションの条件など総合で見直し余地が生じることがあります。前提資料を収集し、複数案を比較したうえで協議するのが現実的です。

まとめ|トラブル予防は「契約の具体化」から

不動産売買の紛争の多くは、契約条項の不備や解釈の相違から発生します。

契約不適合の責任範囲や期間、手付金の性質、ローン特約の条件、リースバックの詳細など、売主としては解釈に相違が生じないように契約条項を詳細に規定する必要があります。

また、買主としては、契約内容について期待外れや勘違いが生じないように、事前に契約書の条項を熟読し、解釈に疑義がある場合には売主に問い合わせをするなど事前の備えが必要です。

物件の特性や当事者の事情により適切な対応は変わりますので、契約前のリーガルチェックやトラブル発生時の対応は、弁護士に相談することをお勧めします。

不動産売買契約のトラブルは当事務所にご相談ください。

契約不適合責任や手付金の返還など、複雑な売買トラブルを法的に整理します。 専門的な視点から、あなたの権利を守るための最適な解決策をご提案します。

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