このメモ帳では、当事務所の弁護士が実際に関与した案件などを参考に、相続問題や不動産問題についての話題を綴ります。
今回は、「テナントが支払う電気料金」の話題です。
オフィスビルなどの賃貸借の場合、電気料金は大家さんが電力会社に一括して支払い、各テナントはその使用量に応じて大家さんに支払うという方式を採用していることが多いと思います。
この場合テナントは、大家さんからの請求額に疑問を抱かず支払いをしているかと思いますが、一般的なテナントは、「大家さんからの請求額は、電力会社に支払っている『実費分』である。」と理解して支払っているのではないでしょうか。
しかし、実際には、大家さんが「実費」分に上乗せをして請求しているケースがあります。当事務所が扱ったケースでは、電力会社に支払う金額の1.2倍~2倍の請求をしているケースがありました。
テナントの立場からすると、「上乗せして請求するのは詐欺だ!」と感じるかもしれませんが、それほど単純ではありません。大家さんはテナントに電気を供給するため、ビルに変電設備を備え付けており、その維持費用をかけています。また、各テナントに請求するための事務作業も行っています。したがって、大家さんの立場からすれば、その分を上乗せしてもよいのでは、という意見になります。
この点、裁判例では、「実費」分の1.3倍程度の上乗せが認められたケースがあります。
ただ、どんな場合でも1.3場合の上乗せが認められるわけではなく、変電設備の維持管理費用にかかる金額、電気料金の精算についての契約書上の規定の内容、共益費の金額、請求事務にかかる労力の程度など、様々な要素によって上乗せが認められるかどうか(どの程度認められるか)、が判断されることになります。
このような争いを避けるためには、契約書において電気料金についての精算方法(請求額の算定方法)を明確に規定しておくことが重要になります。
当事務所においても、大家さんから依頼された賃貸借契約書の見直し作業の中で、電気料金の清算方法を明確に規定する条項をご提案したケースがありました。
賃貸借契約に基づく電気料金の件について、当事務所は賃貸人側・賃借人側いずれの立場からのご相談もお受けしておりますので、是非ご相談ください。