弁護士のメモ帳 相続編 Vol.2

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このメモ帳では、当事務所の弁護士が実際に関与した案件などを参考に、相続問題や不動産問題についての話題を綴ります。

 

今回の話題は、「相続編 Vol.1」と同じく「寄与分」のお話。当事務所では、「寄与分」の事件も含め、常時20件ほどの相続事件を扱っています。

民法には「寄与分」という制度があり、被相続人(親が死亡した場合はその親)に対して、「特別な貢献」をした相続人(親が死亡した場合はその子)が他の相続人よりも多く遺産を受け取ることができるとの制度があります。

 しかし、実際に調停や裁判になると、「寄与分」はなかなか認めてもらえないというのが「相続編 Vol.1」で紹介したお話。今回は、裁判官の踏み込んだ判断で、レアなケースで「寄与分」を認めてもらえた案件をご紹介します。

 当事務所の依頼者(X)は、父Aと母Bとの間の唯一の子でした。Aは平成10年に死亡して相続が発生しましたが、その相続人は妻であるB(当時85歳)と子であるXでした。Xには法定相続分として2分の1の権利がありましたが、Xは自分は何も相続せず、全てBに相続させるという内容の遺産分割協議をしました。その時Xとしては、「母も高齢でそう先は長くない。母が死んだ場合は一人っ子の自分が全て相続することになるのだから、父の遺産は全て母に相続させよう。」と考えたのでした。

 その後、平成15年にBも死亡し、相続が発生しました。Xは、当然自分が唯一の相続人であると信じて、Bの相続関係を調べたところ、驚きの事実が判明したのです。Bは25歳の時にAと結婚しXを出産したのですが、実はそれ以前の16歳の時に一度結婚していて、子(Y)を出産していたのです。XはもちろんAも、Bが再婚であることや他に子がいるということを知らされていなかったのです。どうやら、Bはその事実が発覚しないように、Yを寄せ付けなかったようです。

 この場合、Yも相続人になりますので、XとYとで遺産分割協議をすることになります。法定相続分は各2分の1ですから、XとYは、Bの遺産(Aから引き継いだものとBがもともと持っていたもの)を2分の1ずつに分けるのが原則となります。

 しかし、Xはそれでは納得が行きません。Xとしては、Yがいることを知っていたのであれば、父Aの相続の時に全ての遺産をBに集中させず、自分も遺産(2分の1)を取得していたはずだからです。

 そこで、この案件は当事務所が依頼を受け、家庭裁判所の審判という手続にまで進みました。当事務所は、「Xは、Yの存在を全く知らないで、Aの相続の時に遺産を全てBに集中させた。これはBに対して、特別な財産上の貢献をしたものだから、『寄与分』に該当する。」と主張しました。このような事例はほとんど先例がなかったのですが、家庭裁判所はこの主張を受け入れ、Xが遺産をBに集中させた行為を全額「寄与分」として認めてくれたのでした。裁判官は、AもXも、Yの存在を全く知らされていなかったという点を重視して、なかなか認めてくれない「寄与分」を認めたのだと思います。

 「寄与分」をはじめとして、相続関係の案件では、先例が見あたらない分野もあります。当事務所では、そのような案件にも積極的に取り組んでおります。

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