弁護士のメモ帳 相続編 Vol.4

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このメモ帳では、当事務所の弁護士が実際に関与した案件などを参考に、相続問題や不動産問題についての話題を綴ります。

今回の話題は、相続人ではない方が貢献した場合の寄与分のお話です。「寄与分」は、相続人が被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした場合に認められますが、それ以外の方が主体となって貢献をした場合はどうかという問題です。

よくあるケースが、両親と息子夫妻が同居し、息子の妻(相続人ではない)が両親の介護に尽くした場合です。特に、息子は仕事をしていて日中不在にし、妻だけが家にいて両親の介護をしているようなケースが問題になります。

 この場合には、妻は息子の「履行補助者」であると考え、妻の貢献=息子の貢献として、寄与分が認められる可能性があります。この点については、何についての「履行補助者」なのか明確ではないとして、このような考え方を否定する見解もありますが、実際には妻の貢献=息子の貢献と評価することが争われるケースはあまりありません。

 次によくあるケースが、息子(相続人)が会社を経営していたが、両親をその役員に就任させ(実際には両親は全く働いていない。)、経済的支援を目的として役員報酬を支払っていたというケースです。この場合、息子は相続人ですが、会社自体は相続人ではないので、たとえ会社が両親に経済的な貢献をしたとしても息子の寄与分とは評価できないのが原則です。

 しかし、息子が代表取締役を務め、かつ全株式を保有しているようなワンマン会社であるような「一体性」が認められる場合には、「会社=相続人個人」と評価して、寄与分を認めてもらえる場合もあります。

 当事務所が扱ったケースでも、80歳を超えた高齢の母を、自らが設立し経営している会社の名目的役員に就任させ、約10年間にわたり役員報酬を支払ったという事案で、支払われた役員報酬全額を息子の寄与分として認めてもらえました。

 もっとも、裁判官によっては、会社と相続人個人の一体性について厳しい判断をして、寄与分を認めてくれない例もあるようです。

 当事務所では、相続人本人以外が貢献した場合の寄与分についても積極的に取り扱っておりますので、是非ご相談下さい。

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