弁護士のメモ帳 相続編 Vol.7

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このメモ帳では、当事務所の弁護士が実際に関与した案件などを参考に、相続問題や不動産問題についての話題を綴ります。

今回の話題は、前回に引き続き、「特別受益」のお話です。

 前回の復習となりますが、生前に相続人が被相続人(死亡した人)から贈与などの利益を受けていた場合、「特別受益」となる可能性があります。

では、どの程度の利益を受けた場合に「特別受益」になるかというのが今回のテーマです。

 民法903条1項では、「遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた」時に、「特別受益」に該当すると規定されています。この「生計の資本としての贈与」という点がポイントです。

 典型的なのは、親が子に自宅を建築するための土地を贈与したとか、建築資金を贈与した場合、事業の開業資金を援助した場合などですが、「生計の基礎となるような贈与で、親族間の扶養義務を超えるもの」が「生計の資本としての贈与」であると言われています。ちょっとしたお小遣いや、親が子を養うために当然支出すべき食費や学費などはこれに当たりません。(家庭裁判所の実務では、不動産の贈与と100万円を超える現金の贈与は原則として特別受益と扱っているようです。)

 しかし、実際には「特別受益」に当たるかどうか微妙なケースもあります。当事務所が扱った事案では、親が子の私立高校や私立大学の学費を支払った点が問題になりました。そのケースは、兄は公立高校を卒業後すぐに就職し独立したものの、弟は私立高校・私立大学に進学させてもらったとの事案でした。

 遺産分割調停において兄は、「弟の私立高校・私立大学の学費は特別受益に該当する」と主張しました。これに対して、調停委員会は、私立大学の学費は特別受益に該当するが、私立高校の学費は該当しないと判断しました。

 学費が特別受益に当たるかは、親の資力・職業・学歴、相続人である子の能力、他の相続人との比較など様々な要素によって判断されますが、このケースでは、弟は親が経済的に苦しい中、学費がかなり高額な私立大学に通わせてもらったことが重視されたようです。

「特別受益」に当たるかどうかの判断は微妙なケースが多く、専門的な判断を必要とします。当事務所では、「特別受益」の問題も積極的に取り扱っておりますので、是非ご相談下さい。

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