弁護士のメモ帳 不動産編 Vol.3

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このメモ帳では、当事務所の弁護士が実際に関与した案件などを参考に、相続問題や不動産問題についての話題を綴ります。今回は、「建物の老朽化による立退請求」の話題です。

 建物の賃貸借契約においては、契約期間が満了しても、賃借人が契約更新を求める場合には、賃貸人は原則として「更新の拒絶」ができません。つまり、契約の終了期間が到来しても、賃借人が同意しない限り、賃貸人は「契約期間が終わったから建物を出て行ってくれ。」と言えないことになっています。これは、借地借家法28条に、「賃貸人は、『正当な事由』がない限り、更新拒絶ができない」と規定されているからです。

 では、建物が老朽化して建て替えが必要な場合にも、更新拒絶できないのかという問題があります。この場合、以下のような要素を総合的に判断し、条件を満たせば、「正当な事由」と認められる、つまり立退請求をすることができることになっています。

 ①建物の築年数や構造・材質、老朽化の程度はどの程度か。

 ②老朽化部分を修繕するための費用はどの程度必要か。

 ③賃借人がその建物を継続的に使用する必要性がどの程度あるのか。

 ④賃借人の引越先(代替物件)を容易に探すことができるか。

 ⑤これまでの賃貸借関係のなかでどのような経緯があったか。

 ⑥立退料としてどの程度の金額を提示するか。

 以上のような条件に加え、建物が「耐震不足」の建物であれば、耐震不足の程度や耐震補強に要する費用なども考慮されます。「耐震不足の建物」というのは、建物が建築された当時の耐震基準には合格しているものの、現在の新しい基準には適合していない建物で、大地震が発生した際に倒壊の危険がある建物を意味します。一般には、専門家に「耐震診断」をしてもらった上で、耐震補強工事の見積もりを取得し、その条件を満たすかどうかを検討します。

 また、⑥の立退料ですが、仮に「老朽化」「耐震不足」の建物であっても、立退請求をする場合には一定の「立退料」の支払いが必要です。立退の裁判になった場合、裁判所が立退料なしで立ち退きを認めるケースは皆無と言ってよいでしょう。賃借人が事業者の場合、この立退料の算定は複雑ですので、不動産鑑定士に鑑定をしてもらうケースもあります。

 都内では、老朽化が著しく、「耐震不足」の賃貸物件が多数存在します。当事務所では、立退を請求するオーナーの立場はもちろん、立退を請求された賃借人側の立場での弁護もお引き受けしておりますので、是非ご相談ください。初回の相談で、立ち退きが認められる可能性だけでなく、概算ではありますが、立退料の見込額をアドバイスすることができると思います。

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